研究概要 |
日本全土の代表的な湿地において生態学的な調査を行い,日本を代表するような古海水準変動復元のためのデータセットを提供することを目指し,東北日本各地の沿岸湿地において調査を行った.平成21年度は,空中写真や地形図などから選び出した8地域において,生態調査を行った.具体的には,北海道根室市温根沼(30地点),北海道浜中町藻散布(5地点),岩手県宮古市津軽石川河口干潟(22地点),宮城県石巻市長面浦(18地点),千葉県木更津市小櫃川河口干潟(3地点),神奈川県三浦市江奈湾(9地点)・毘沙門湾(15地点)・小網代(12地点)において表層堆積物の採取を行った.採取した地点は,トータルステーションを用いて直近の水準点あるいは三角点との比高を計測した.また,採取地の近辺における植生の記載を行い,さらに水質(主に,塩分)を計測した.また,以前に採取して保管していた試料を本研究課題に生かすため,北海道根室市において補足的な測量作業を行った.採取した試料は,次亜塩素酸ナトリウムで処理し,珪藻殻をスライドグラスに封入した.封入したスライドは光学顕微鏡下で観察し,各地点の試料中に含まれる珪藻殻を少なくとも500個体ずつ同定・計数した.種レベルまで同定できなかった個体については,光学顕微鏡写真をデジタル映像として残し,後に再検討ができるようにした.以上の作業の結果,温根沼では汽水産珪藻Scolioneis tumidaの分布,宮古市ではEntomoneis sp.の分布,長面浦ではAmphora属やSeminavis属珪藻の分布,小櫃川ではPseudopodosira kosugiiの分布を知ることができた.平成22年度は同様の調査を継続し,珪藻類の分布と標高の関係に関するデータを蓄積していく予定である.
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