研究概要 |
日本全土の代表的な湿地において生態学的な調査を行い,日本を代表するような古海水準変動復元のためのデータセットを提供することを目指し,東北日本各地の沿岸湿地において調査を行った.平成22年度は,地形図などから選び出した16地域において,生態調査を行った.具体的には,北海道厚岸町(78地点),千葉県木更津市(15地点),三重県鳥羽市(春尻川河口干潟で10地点,苔ヶ瀬河口干潟で33地点),愛知県美浜町(上野間地域で13地点,奥田地域で10地点,上村地域で20地点,時志地域で8地点),山口県山口市周辺(新地海岸(阿知須)で10地点,秋穂二島で10地点,秋穂湾で10地点),山口県下関市の干潟(20地点),福岡県糸島市(引津湾で13地点,船越湾で8地点),佐賀県伊万里市(釘島周辺で16地点,東山代町で13地点)において表層堆積物の採取を行った.採取した地点は,トータルステーションを用いて直近の水準点あるいは三角点との比高を計測した.また,採取地の近辺における植生の記載を行い,さらに水質(塩分,pH,conductivityなど)を計測した.前年度に水質測定を行えなかった場所については,本年度に再度訪れて水質の測定を行った(宮城県石巻市).採取した試料は,次亜塩素酸ナトリウムで処理し,珪藻殻をスライドグラスに封入した.封入したスライドは光学顕微鏡下で観察し,各地点の試料中に含まれる珪藻殻を少なくとも500個体ずつ同定・計数した.以上の結果,各地域において珪藻種ごとの分布を詳細に知ることができた.例えば,厚岸町ではDiploneis decipiens var. parallelaやNavicula salinarumなどの分布を押さえることができた.また,昨年度の調査で特に重要と考えられたPseudopodosira kosugiiの生育帯をより詳しく知ることができた.これらのカウント結果を元に成準対応分析を行った結果,環境要因(特に,標高)と珪藻種の関係を知ることができた.
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