研究概要 |
本研究の目的は,現在の北太平洋中層水の南限域にあたるフィリピン海と東シナ海から採取された海底コアをもとに微化石群集を調査し,過去のこの海域の中・深層環境の理解を得ることである.この目的のため,当該年度に実施したのは以下の通りである. ◎フィリピン海から既に採取されている2本のコアGH08-2004とGH08-2005に関して,有孔虫の摘出と放射性炭素年代の測定を計12試料について実施し、昨年度と合わせて計28試料の年代値を得るに至った.更に分析値を増やすため、30試料の有孔虫の摘出を実施し、今年度に分析を行う予定である。 ◎コアGH08-2004について、底生有孔虫の炭素同位体比を測定し、底層水の性質の変化を明らかにした。その結果、最終氷期から完新世に至る遷移期において2度にわたって底層水の著しい変化が起こった事が示唆された。これは、ベーリング海などで見られる環境変化と同調しており、北太平洋に広域的なイベントである可能性が高い。今後、この変化がどのようなメカニズムで起こったかを、浮遊生-底生有孔虫の放射性炭素年代差および微化石群集から考察する予定である。 ◎東シナ海より6本の海底コアを採取し、古海洋研究に利用可能かどうかの検討を行った。これらのコアは、いずれも最終氷期以降の堆積物を連続的に記録していると考えられ、何れも本研究課題の目的に有望である事が明らかとなった。 ◎東シナ海と日本海を繋ぐ対馬海峡から採取されたプランクトン試料から放散虫の生態を調査し、特異な海洋環境に対応した分布を示すなど古海洋研究に有効な情報を提供した。
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