研究概要 |
本研究の目的は(1)マルチメガバール領域(200GPa以上)における圧力スケールの確立と(2)地球核物質のより正確な圧縮特性の解明と地球中心核組成の推定である。 地球内部を実験的に再現する際にはその実験圧力を決定するために圧力スケールとなる物質が必要である。しかし、地球中心に相当するような圧力条件は地球科学および物性物理学双方にとってのフロンチィア領域であり、そのような高圧力条件で使用できる圧力スケールは満足に整備されているわけではない。本研究では目的(1)に対応する成果として、鉄系試料との反応性の乏しく圧力スケール物質として有用なNaCl-B2相について、白金の圧力スケールをもとに304GPaまでの圧縮実験に成功し、マルチメガバール領域で使用できる圧力スケールとして確立した(Sakai et al., j.Appl.Phys.,2011)。 目的(2)に対応する成果としては、Feについて273(6)GPa and 4490(560)Kまで、Fe_<90>Ni_<10>について250(19)GPa and 2730(110)Kまで、Fe_<97.9>Ni_<4.4>Si_<7.7>合金について304(3)GPa and 2780(210)Kまでの相関係を調べた。この結果、いずれの場合についてもhcp構造が安定であり、地球内核はhcp構造の合金で構成されている可能性が高いことを示した。また同時に結晶の軸比c/aの温度依存性を測定することで、マルチメガバール領域においてもc軸方向の方がa軸方向よりも硬いことを明らかにした。このことは内核の地震波速度異方性が、地球の自転軸方向に結晶のc軸方向が選択配向することで説明されうることを示している(Sakai et al., Geophys. Res. Lett., 2011)。また内核に含まれる可能性のある硫黄を含むFe_<88.1>Ni_<9.1>S_<2.8>合金についても370GPaまでの圧縮実験に成功し、地球内核の密度がhcp-Fe-5 at.% Ni-4.8-7.3 at.% Sの組成で説明されうることを明らかにした(Sakai et al.,In prep.)(国際学会招待講演)。
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