CaSiO_3ペロヴスカイトは下部マントルの主要構成鉱物の一つであり、地球深部の構造や物質構成を解明する上で、その性質を詳しく理解することが重要である。本研究では定温第一原理分子動力学法に基づき、80原子からなる大規模計算セルに対し十分に密なk点サンプリングを適用して電子状態の計算精度を注意深く確認したうえでシミュレーションを実行した。その結果、従来の計算に比べ、剛性率が最大約39%、弾性波速度、特にS波速度が最大約22%遅いことがわかった。得られた結果を用いて多相系弾性特性をモデル化したところ、CaSiO_3ペロヴスカイトを多量に含む玄武岩質岩石の弾性波速度が、従来なされていた見積もりよりも大きく低下することが明らかとなった。これらの結果から、温度不均質では説明が困難であった下部マントルにおいて観測される特徴的な弱いS波低速度異常やS波速度と体積弾性波速度の逆相関が、沈み込んだ海洋地殻による化学不均質により説明できるという重要な知見が得られた。
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