研究概要 |
本年度は,金属-水素系の高圧実験用ダイヤモンドアンビルセル(DAC)の開発・導入を行い,この装置を用いた高圧発生技術の開発と放射光その場X線観察実験を実施した.水素ガスを充填した金属-水素系試料に対する高圧発生技術は未だ確立しておらず,水素化物の高圧研究を推進していくためには,高圧発生技術開発・確立は重要な課題の一つとなっている.導入したDACは,試料室への水素ガス充填として高圧ガス充填法と低温液化充填法の両方式に対応可能な仕様とし,また室温,低温および高温下での金属-水素系の高圧X線観察実験ができる仕様とした,金属-水素系試料における高圧発生技術開発は,新たに導入されたDACおよびシングルベベルド型ダイヤモンドアンビルを組み合わせ実施された.その結果,定常的に75万気圧の圧力発生が可能となった.アンビル先端径と試料サイズを変えず,アンビル形状とアンビルを設置する台座の形状との組み合わせを最適化することにより,アンビルの耐加重を改善することができ,100万気圧を超える圧力発生が可能になると考えられる.また鉄-水素系に関して,放射光施設SPring-8にて高圧X線回折実験を実施した.高圧下で形成される鉄水素化物は,水素吸蔵時に構造相転移を伴って合成されるため,積層欠陥が導入される,そのため観察される回折線は,非常にブロードである.それを改善するため,レーザー加熱法により試料をアニーリングし,その後鉄水素化物の圧縮特性を調べた.アニーリングの結果,回折線は非常にシャープになり,アニーリングの有用性が確認された.圧縮特性は,40万気圧以上の圧力領域で従来よりも圧縮されにくい振る舞いが観察された.圧力スケールおよびデータの再現性も含め追加実験が必要であるが,この結果は,地球中心核中に含まれる水素が従来考えられている存在量に大きく影響することを示唆している.
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