研究課題
長崎変成岩類の蛇紋岩メランジを対象に、蛇紋岩メランジにおける交代作用と変形の相互関係を明らかにすることを目的として室内研究(薄片顕微鏡観察、全岩化学組成分析など)を行った。その結果、以下の成果を得た。(1)ヒスイ輝石岩およびオンファス輝石岩の構造岩塊は周縁部に曹長岩の反応帯を伴う。反応帯は、構造岩塊がメランジ中に捕獲されて上昇する過程で形成されたと考えられる。アイソコン法による質量-体積バランス解析では、反応帯の形成に伴う固相体積の増加が示された。このことは岩石の間隙率の低下を示唆し、昨年度に行った泥質片岩の構造岩塊に見られる曹長岩化(間隙率の増加を伴う)と逆の結果となった。ヒスイ輝石岩の場合、反応帯により構造岩塊がメランジ中の流体相から隔離されて、高圧で安定な鉱物組み合わせ(ヒスイ輝石+石英)の保存につながった可能性がある。(2)泥質片岩中の蛇紋岩体は、外側に向かって、滑石帯、ドロマイト+マグネサイト+石英帯、緑泥石帯、白雲母帯、曹長石帯からなる反応帯を伴う。滑石帯から蛇紋岩中にマグネサイト+石英脈、白雲母帯から泥質片岩中にドロマイト脈が伸びている。アイソコン法による質量-体積バランス解析では、滑石帯および曹長石帯に対して反応対形成に伴う固相体積の減少と流体の生成が示された一方、ドロマイト+マグネサイト+石英帯と緑泥石帯に対して固相体積の増加が示された。白雲母帯では固相体積の減少と流体の消費が示された。このことは、反応帯の中央部で間隙率の低下、両端で間隙率の増加が起きることを示し、露頭で観察される変形構造(鉱物脈)の産状と調和的である。得られた成果は日本鉱物科学会にて口頭発表されたほか、その一部は論文(Shigeno et al., 2012)としてEuropean Journal of Mineralogyに掲載された。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
European Journal of Mineralogy
巻: 24 ページ: 247-262
DOI:10.1127/0935-1221/2012/0024-2198
巻: 24 ページ: 289-311
10.1127/0935-1221/2012/0024-2195
Journal of Volcanology and Geothermal Research
巻: 229-230 ページ: 64-73
10.1016/j.jvolgeores.2012.04.003