平成22年度は炭素質隕石の酸分解をます完了させた。最初に塩酸・フッ酸を用いて徹底的に分解した後、残渣をCsF/HF溶液とジオキサンを用いて抽出分離を行い、軽く遠心分離を行った。水相と有機相の中間部に浮かび上がった物質(2とする)、そして沈澱した物質(3とする)をそれぞれ取りだして十分洗浄した、蟻酸タリウムと共にステンレスカプセルに封入し、超遠心力場発生装置を用いて大61万g、24時間、到達温度110℃の条件下で分離を行った。カプセルを切断し、カプセル中の試料の上部と下部とを分離して取り出して十分洗浄した。試料はそれぞれ2U、2L、3U、3Lと命名した。Uはカプセル上部、Lはカプセル下部を意味する。それぞれのフラクションのうちの一部を超精密天秤で秤量した後タンタル製サンプルホルダーに入れ、これをレーザーポートに導入して超高真空中で軽くプレヒートした。試料はNd-YAG CWレーザーを用いて含有している希ガスを全て取り出してHeからXeまでの希ガス同位体を分析した。その結果、3Uと3Lにはほとんど重い希ガスは含まれていなかった。2Uと2Lの比較では、2Lの重い希ガスの濃度は2Lより1桁以上高く、phase Qは2Lフラクションに濃縮していることが明らかとなった。この実験結果は、隕石中の炭素質物質、もしくはそれと強くコンタクトしている微小な物質のうち、重い物質中にphase Qりが含まれていることを示している。またこの結果は、2Uの主要な構成物質が炭素物質であることから、少なくとも全ての炭素質物質中に均質にphase Qが含まれてはいないことを明確に示しているだけでなく、phase Qが炭素質物質ではない重い微小粒子である可能性さえ暗示しており、極めて意義深い。
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