本年度は後進波発振管(BWO)のシミュレーションによる発振実験と非中性プラズマ閉じ込め装置の構築に着手した。 1. 後進波発振管(BWO)のシミュレーションによる発振実験 (1) 10GHzらせんBWO 電子ビームをらせん型遅波回路の内側に通した場合と、外側に通した場合について、荷電粒子シミュレーションを行った。両者とも、加速電圧10keVの電子ビームに対し9GHzの電磁波発振を確認した。電磁波の出力は、外側にホロー状ビームを通した方が1.5倍向上した。これはビームと遅波回路の相互作用領域が増えたためであると考えられる。 (2) 100GHzインタディジタルBWO 2つの櫛を合わせた形状であるインタディジタル型の遅波回路を備えた発振周波数100GHzのBWOを設計し、荷電粒子シミュレーションを行った結果、周波数100GHz、出力1Wの電磁波発振を観測した。遅波回路と電子ビームを多層構造にした場合、発振効率が向上することが判明した。この構造によりテラヘルツ帯電子管の高出力化が期待される。 2. 非中性プラズマ閉じ込め装置の構築 電子源より生成された電子群を磁場と電位により捕捉・保持する装置として、多重電極型閉じ込め装置を構築中である。磁場装置、閉じ込め電極、電流導入端子、ファラデーカップおよびこれらを組み込んだ上での真空テストを行った。現在、電子ビーム入射実験に着手できる状況にある。 来年度は、非中性プラズマ装置によるホロー状ビーム特性の測定、バンチした電子群の分散特性の観測を行う。また、シミュレーション結果に基づき実際にBWOの製作を行い、電磁波発振実験を行う。
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