研究概要 |
2つの櫛を合わせた形状であるインタディジタル型の遅波回路を備えた発振周波数100GHzのBWOを設計し、荷電粒子シミュレーションを行った結果、周波数100GHz、出力700mWの電磁波発振を得た。これは,従来の同帯域BWOより5倍程度強い。また,遅波回路と電子ビームを多層構造にした場合、発振効率が向上することが判明した。これらのシミュレーション結果を踏まえ,40GHz帯のプロトタイプBWOの製作を行った。遅波回路と電磁波伝送線路はテフロン基盤上にエッチングでパターンを刻んだ。ネットワークアナライザによる電磁波伝送テストを行った結果,コネクタと基盤の接続部でロスが大きいことが判明した。並行して,電子源の開発を行った。カソードは,酸化バリウム含浸カソードを用いた。ネオジム永久磁石による一様磁場中を充分な電流密度で精度良く電子ビームが走ることを確認した。 電子群を磁場と電位により捕捉・保持する多重電極型閉じ込め装置を構築し,後進波発振の種となる電子ビームの基礎特性に関する計測を行った。まず,閉じ込め装置としての機能を確認するため,電子群の閉じ込め時間を測定した。1/e閉じ込め時間が磁場強度0.1Tで30秒と充分な閉じ込め特性を有することが判った。熱カソードから出射される電子ビームのエネルギーはカソード温度の10倍程度の拡がりを持つことを観測した。この電子ビームを電位障壁間に閉じ込めると,クーロン2体衝突緩和時間よりも遥かに早い時間スケールでエネルギーが緩和する観測結果を得た。この原因は,電位障壁間の往復運動による2流体不安定性によるものと予想される。ビームの往復時間を精密に制御した実験と,シミュレーションによる検証を進めている。
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