生体内で用いる医療用材料の高機能化には、樹脂材料本来の優れたバルク特性を生かしつつ応用に適した機能性を表面に付与する必要がある。また、バイオセンサなどの電子デバイスと応用するには、特定の機能を持った表面を選択的に形成する技術が重要となる。以下に平成22年度における主な研究成果を記載する。 1)プラズマ化学修飾を用いた機能性材料の固定化率向上と選択的配置:プラズマ生成に用いるアルゴンおよびアンモニアガスの混合比を変え、アミノ基修飾率の評価と最適化を行った。その結果、アンモニアに対しアルゴンを10~25%程度を導入したときにアミノ基修飾率が最大となった。また、マスクパターンを用いてプラズマ処理したポリマー表面にアミノ基と反応する蛍光色素を固定化し、蛍光顕微鏡によりアミノ基の選択的配置の確認を行った。その結果、約50μmのマスクパターンに対応した良好な蛍光像が得られ、精度の高いアミノ基の選択的配置を確認した。 2)カーボンナノチューブ表面への官能基修飾と金属吸着:リソグラフィ技術およびプラズマCVD法によりカーボンナノチューブを規則的に配列した基板を作成し、それをプラズマ処理することで基板上のカーボンナノチューブ表面のみにアミノ基およびカルボキシル基などの官能基を選択的に修飾できることを確認した。また、プラズマ処理したカーボンナノチューブの液中分散性が大幅に向上することがわかった。原子吸光分析により溶液中のニッケル濃度を測定した結果、プラズマ処理したカーボンナノチューブのニッケル吸着量が大きく向上することがわかった。
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