本研究では、最終的に大面積に堆積処理が行える装置に適用することを想定した実験装置を作製し、原料の利用率を高めるための装置設計や処理条件などの指針を得ると共に、可能な限り堆積速度を高めるための指針についても検討することを目的とした。また、堆積させるモノマーには、構造が単純で堆積しやすく解析が用意であると考え、以前の研究で採用したエチレンをこの研究でも用いた。 本年度は、エチレンプラズマ中からガスを採取し、GC-MSを用いて気相生成物の分析を行った。このとき、採取位置やガスの流量を変化させることによって、試料ガスがプラズマ空間に滞留する時間を変えながら採取を行った。その結果、1秒程度の滞留時間でエチレンは導入量の15%程度まで減少し、残ったエチレンは気相中で分解と生成の平衡状態(エチレン←→メタン)にあることが示された。よって実用化することを考えた場合、対象となるモノマーに対して同様の実験を行い、モノマーを使い切るのに必要な滞留時間を調べることによって、装置の設計寸法の指針が得られ、それが最大の堆積速度を得るための条件ともなる。また、堆積物の質量を測定してみたところ、滞留時間1秒で導入したエチレンの約85%が堆積物となっていたことから、消費されたエチレンがほぼ全て堆積されたことになり、大気圧グロープラズマは、非常に効率の良い薄膜堆積手法であることが示された。
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