研究概要 |
臨界密度近傍のプラズマ中に超高強度レーザーを伝播させると、ソリトンや磁気渦が形成される[1,2]。特に、レーザー及びプラズマパラメータを適切に選ぶことで、安定な磁気双極子渦を形成することが可能である[3]。本研究では、磁気双極子渦の非一様密度プラズマ中での運動を理解し、それを制御することで高エネルギーイオンの発生が可能であることを明らかにした[4]。具体的には、磁気渦を密度勾配のあるプラズマ中に形成し、その磁気渦の膨張過程を利用する。その結果、急峻なイオン面の形成及び、磁気渦先端部における静電界の誘起が起こる。この静電界が磁気渦の膨張と共に動き、イオンが渦先端部で局所的に加速される。これを磁気渦加速と呼び、新しい高効率なイオン加速法として提案した。レーザーイオン加速の研究は、ガン治療用小型加速器の実現可能性があることから世界中の多くの研究機関において進められている。従来の加速手法(シース場加速)に比べ、磁気渦加速はその加速効率が10倍程度高く、現存するレーザーで医療応用に必要な200MeV陽子の発生が可能であり、癌治療用加速器の実現を可能にする新しい手法として期待されている[5]。また、磁気渦加速における負イオンの挙動を粒子シミュレーションにより解明し、正イオンが磁気渦の運動前方に加速されるのに対し、負イオンは磁気渦中ではあまり加速されずレーザーチャネル中においてより効率的に加速されることが分かった。[1]V.Kozlov, et al., Sov.Phys.JETP, 49,75(1979).[2]G.Mourou, et al., Plasma Phys.Rep.28,12(2002).[3]T.Nakamura and K.Mima, Phys.Rev.Lett.100,205006(2008).[4]T.Nakamura, et al., Phys.Rev.Lett.106,135002(2010).[5]福田祐仁、中村龍史、特願2010-264833.
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