本研究は、クラスター展開法を基にした原子核の量子多体系ダイナミクスの新しい手法を開発し、量子液体に対して数値的に厳密な時間相関関数を求めることを目的としている。最近、様々な量子ダイナミクスの近似計算手法が提案されたが、等方ポテンシャルからなる単純量子液体の系でも速度自己相関関数の計算結果には手法間で大きな食い違いが見られた。そこで本研究では、この量子液体の時間相関関数の数値的厳密解をターゲットとした手法の開発を行い、既存の近似手法の精度を詳細に検証する。さらに、同種粒子(ボーズ、フェルミ粒子)系の量子液体にも拡張し、同種粒子対称性が時間相関関数に及ぼす影響の定量的理解も深める。 本年度は三体効果を取り入れるプログラム開発を行った。三体の遷移要素は短時間の二体遷移要素から数値積分を繰り返すことで得た。九次元のデータとなるため多項式フィットを行い、モンテカルロ計算で簡単に数値評価できるようにした。また、多項式フィットが困難な領域では参照点を利用する重み付き最小二乗法による内挿法で評価できるようにした。 結果、三体相関の導入により、精度が大幅に上がることを確認した。二体相関のみの計算と同様に、時間依存しない物理量の変化を求めることで遷移要素の精度を評価した。長時間では多体効果の影響が顕著になってくるため精度は落ちるが、二体と三体の比較を行うことにより、短時間で一致している時間領域では数値的に正確な解が得られたと言える。
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