本研究は、クラスター展開法を基にした原子核の量子多体系ダイナミクスの新しい手法を開発し、量子液体に対して数値的に厳密な時間相関関数を求めることを目的としている。さらに、同種粒子(ボーズ、フェルミ粒子)系の量子液体にも拡張し、同種粒子対称性が時間相関関数に及ぼす影響の定量的理解も深める。本年度は、昨年度までに行った三体までの相関を取り入れた計算を拡張し、四体まで取り入れるようにプログラムの変更を行った。四体系の複素時間遷移要素の数値評価であるが、基底関数法ではコストが大きく、十分な精度を得ることができなかったために、半古典論を基にした近似計算手法で求めた。遷移要素のデータは多次元であり、メモリ内に保存することが出来なかったために、モンテカルロ計算で逐一求めることとした。また、二体系から三体系、三体系から四体系の遷移要素をガウス積分による数値積分で求めることができるようにプログラムの拡張も行った。これにより、原理的にはすべての相関を自動的に取り入れることが可能となった。同種粒子系の拡張に対しては、まず、ボーズ粒子系への適用を行った。二次元のLennard-Jonesボーズ流体へと適用し、ボルツマン統計の下での計算と比較を行い、時間相関関数における同種粒子の効果を議論した。来年度は、Fixed Node Approximationを用いたフェルミ系への展開を行い、ボーズ系と同様に二次元流体の時間相関関数を算出する予定である。
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