研究課題
固体と液体の界面である「固液界面」で起きる化学反応を、原子レベルで直接観察する手法として電気化学走杏プローブ顕微鏡(EC-SPM)が広く用いられているが、現状では通常の場合の観察速度が0.001-0.003枚/秒程度と遅く、反応の動的過程を観察することは出来ない。本研究では、高速液中原子間力顕微鏡(液中高速AFM)、電気化学走査トンネル顕微鏡(EC-STM)、ラジオ周波数走査プローブ顕微鏡(RF-SPM)の3つの技術を融合し、世界最高速度(10枚/秒以上)で観察可能なEC-高速SPMを開発することで、固液界面反応の動的過程を原子レベルで明らかにすることを目的としている。本年度は、昨年度までに作成したEC-高速AFMを用いて、金単結晶試料上の塩化物イオンの直接観察を行った。通常のEC-SPMでは、観測速度が遅く、観測することが不可能であった溶液甲の塩化物イオンをEC-高速AFMを用いることにより、初めて観察することに成功した。塩化物イオン観測のためには、様々な実験条件を最適化する必要があり、特に電極電位の調整は非常に重要であることが分かった。その結果、これまでは不明であった塩化物イオンの集合体の拡散現象が観察された。塩化物イオンは孤立したイオンではなく、数10nm程度の集合体を形成し、拡散することが分かった。溶液中の塩化物イオンは、金表面の電気化学エッチングと強く相関があることが提案されており、来年度以降、この特異的な拡散とエッチング反応の関連などを明らかにする予定である。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件)
表面科学
巻: 31 ページ: 474-479