本年度はメタンと二酸化炭素の混合ガスハイドレートの構造解析を行った結果、混合ガスハイドレート、ドライアイス、氷Ih、氷Ic、バナジウムセルの5相に分かれていることがリートベルト解析により明らかになった。さらに混合ガスハイドレートのスモールケージにはゲスト分子がほぼ存在せず、ラージケージにのみメタンと二酸化炭素の混合ガスが存在していることが明らかになった。ただし、存在する割合が、仕込みの混合ガス比がメタン7割、二酸化炭素3割であるのに対して、解析結果ではほぼ半々になっていることから、合成時の温度調整等により、選択的に二酸化炭素が多く混入してしまったのではないかと考えられる。スモールケージから選択的にゲスト分子が抜けることはこれまでにも報告されていたが、構造としてとらえたのは初と考えられる。結晶学会および中性子科学会にて研究成果の発表を行った。 本年度はさらにエタンハイドレートおよびプロパンハイドレートの合成に成功し、飛行時間型粉末中性子回折装置を用いて、回折パターンを得ることに成功した。現状の大まかな解析結果では、両方とも単相で、従来から報告されている構造から期待されるピークの反射位置と一致していることが確認できており、さらに内包されているゲスト分子の詳細な原子座標を明らかにするよう解析を行っている。今回得られた回折パターンはきれいな単相のデータであることから、炭化水素ガスハイドレートの内包されたゲスト分子の様子を明らかにする上で、基礎となる重要なデータを得ることができたと考えられる。粉末中性子回折は空間および時間の平均としてとらえることができ、ガスハイドレートにおけるゲスト分子の様子または混合ガスの割合を分析する上で、有効な手段であることが証明できるのではないかと我々は期待している。
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