研究概要 |
本研究は、驚異の光エネルギー変換効率を実現している光合成細菌の電荷分離反応につき、効率の要因の一つとされる機能分子エネルギー準位相関の解明を目的に、電子供与体と電子受容体の酸化還元電位を分光電気化学計測法により実測することを目指すものである。 初年度は、酸素発生型光合成光化学系IIを用いて、電子受容体の酸化還元電位の計測手法を確立した。一次電子受容体フェオフィチンaについては、密封型薄層電解セルを作成し、水素過電圧の高い水銀を金メッシュ電極にメッキしたものを作用電極として用い、分光電気化学計測に適用したところ、従来では不可能であった生理的pHでの計測が可能となり、シアノバクテリアから精製した光化学系IIを用いて測定した結果pH6.5で-505±6mVと決定した(Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 106,17365-17370(2009))。これは30年前に報告されていた値(-610±30mV、pH11)よりも100mV貴であるが、本手法によってより実態に近づいた値を提示できたといえる。 二次電子受容体についても、蛍光法と電気化学法を組み合わせることで、初めて二次電子受容体プラストキノンの分光電気化学的計測手法を確立し、シアノバクテリアの光化学系において-140mVと決定した(Biochemistry,48,10682-10684,(2009))。この結果と先のフェオフィチンaの結果より、自由エネルギー差ΔGは-300~-370mVにあるはずだといえ、酸化還元電位測定の結果により初めてエネルギー相関を提示できた。
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