研究課題
室温~200℃まで可変な恒温液体セルの製作を試み、これを用いたイオン液体のテラヘルツ複素誘電率スペクトルの温度依存性を測定する準備を行った。試料には、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェートを対象としてテスト測定を行った。このイオン液体は室温では固体であり(融点62℃)、溶解過程におけるテラヘルツ複素誘電率スペクトルの変化も追跡することができる。また、吸湿性の低いイオン液体であるため、試料作成時における空気中の水分の影響が小さく、信頼性の高いデータの取得に有利である。高温用液体セルの窓に高抵抗シリコンを使用している。ただ、テラヘルツ時間領域分光法で用いるテラヘルツ波はそのビーム系を非常に小さく絞ることができないため、通常のレーザーを用いる恒温セルよりも大きな開口径を有するセルを作成し、十分な開口径を有することを実験的に確かめた。開口径が大きい場合、試料の温度の不均一性が問題となることが予想されるが、この検査は2年目に行う予定である。イオン液体が固体状態から溶解することによって、テラヘルツ低周波数領域の強度が急激に上昇することを確認し、大域的な結晶構造から局所構造への崩壊過程の変化として、詳細なスペクトル変化を調べる準備測定ができたといえる。さらに、液体状態で温度を上昇させ、テラヘルツ複素誘電率スペクトルの変化を追跡することを2年目に行い、この実験を通して、イオン液体の局所構造の崩壊過程に関する新たな知見を得る予定である。
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