本研究では色素増感太陽電池における半導体電極上のI_3^-濃度と色素の構造の因果関係を明らかにすることである。特に色素分子中の部分電荷分布と分散力の影響を調べ、さらに色素の設計指針を提示することである。H21年度においては1) 電解液中のカチオンのサイズの影響、2) コバルトレドックス対の場合、3) ポルフィリン色素の中心金属の有無、4) Oligoene色素の場合、5) 色素の過渡吸収と太陽電池の電子寿命の同時測定装置の作製、を計画し、以下の結果が得られた。 1) カチオンを変えた場合酸化チタン表面の電子状態が変化している可能性が見られ、その変化とカチオンの影響を分離する方法がまだ分からず、詳しい解析は現在も検討している。2) コバルトレドックス対を用いた場合もヨウ素レドックス対の場合と同じ傾向が見られ、物理的作用と静電作用の両方の影響が示唆された。3) ポルフィリン色素において中心金属が無い場合電子寿命が短くなり、予想と異なる結果が得られたが、部分電荷密度での解釈を現在検討している。4) Oligoene色素の場合、分子サイズ(共役)が大きくなると電子寿命が短くなり、いままでのクマリン系とは異なることが分かった。これは分散力で説明できると考えられ、結果、物理的ブロッキング効果、部分電荷密度、分散力の順番で酸化チタン表面のI_3^-濃度に影響を与えると考えられる。カルバゾール色素でも、サイズの小さい分子で測定したところ電子寿命が長く、部分電荷密度の影響の小さい色素に関しては分散力の効果が見えると解釈できる。5) 3極セルでの同時測定を確認したが、若干応答速度に不安が残り、今後実際の太陽電池で詳しく動作検証を行う。
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