電子相関と、反応環境の効果を効率的に取りこむ高精度なab initio分子動力学法の開発として、昨年度に引き続き、密度汎関数法について高次の応答量を計算するプログラムの開発を行った。 時間依存密度汎関数法や、運動方程式結合クラスター法においては、励起状態分子動力学法で重要な役割を果たす非断熱カップリング等の励起状態のプロパティは高次の応答量計算によって求めることができる。しかしながら、高次の応答量の計算では、数多くの項を含み非常に煩雑となるため、今日までそれほど多くは実装されていない。 そこで本年度も、昨年度から引き続き高次応答量において最も煩雑な項が生成する密度汎関数法の高次微分項の自動導出、実装プログラムの開発を行った。昨年度から開発している、高次応答量において最も煩雑な項が生成する密度汎関数法の交換相関汎関数の高次微分項の自動導出、実装プログラムでは、代数演算により系統的に高次項を生成することができる。そこで、近年数多く開発されており、多数のフィッティングパラメータを含む多項式の形状を持つ交換相関汎関数の一つである、Becke97交換相関汎関数や、長距離交換補正を行ったwB97交換相関汎関数に対して、この自動導出実装プログラムを用いることにより、高次応答量である超分極率の計算プログラムの実装、検証計算を行った。これらの結果は国際学会the Fifth Asian Pacific Conference of Theoretical and Computational Chemistry (APCTCC 5)と第二回AICS国際シンポジウムにおいてこれらの成果をポスター発表した。
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