高質量の気相合成クラスターイオンを超高感度に検出するシステムを構築した。検出システムは主にマイクロチャネルプレート(MCP)、シンチレータ、光導波路(合成石英管)ならびに光電子倍増管(PMT)により構築され、入射イオンをMCPへ衝突させ2次電子を生成し、さらにシンチレータにより光子へと変換したのち、光導波路を介して光子を大気中に搭載されたPMTにて検出することで高感度化を実現した。標的イオンとして金原子(質量数:197)を用いて検出感度の評価を行った結果、市販のMCPイオン検出器と比較し、約800倍もの感度を有することが確認された。一般に、イオン検出器の感度は高質量になるにつれて低下するが、高い速度をもたせて検出器表面に衝突させることで、高質量種においてもその検出感度を飛躍的に向上できることが知られている。本研究では、検出部の各電極の耐電圧値を20-40kVとして設計を行った結果、10keVを超える運動エネルギーにて検出面と衝突させることが可能であり、100000Daを超える高質量の気相化合物に対する高感度イオン検出へ展開できると考えられる。さらに本研究では、気相化学種の光物性を検証する実験システムの構築の一環として、可視光透過性基板へ気相化学種を担持する手法を確立した。可視光透過性基板としてITO膜ならびにルチル型SnO_2(110)基板を使用し、有機単分子膜マトリクスで化学修飾したのちに気相合成した有機金属クラスターをマトリクス単離した。その結果、基板上で配向性が発現し、さらにSnO_2(110)基板に単離したクラスターのおいては、室温領域においてマトリクス単離が達成され、高い熱的安定性を有することが明らかとなった。単離クラスターの熱的安定性は有機分子マトリクスの熱物性(相転移過程)に相関しており、マトリクスの下地基板であるITO、SnO_2の表面形態の差異が、クラスターの熱的安定性に寄与していることが示唆された。
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