<内容> 本研究テーマは、自発的界面張力変動が生じる物質の特定を、本変動現象の解明と共に行うことである。今年度の大きな発見として、1)飽和NaClおよびZnCl_2ニトロベンゼン溶液+1mMトリメチルステアリルアンモニウムクロリド水溶液系、すなわちヨウ素を使わない系での自発変動の発見および、2)高濃度ヨウ素/飽和ヨウ化カリウムクロロベンゼン溶液+1mMトリメチルステアリルアンモニウムクロリド水溶液、すなわちニトロベンゼンを使わない系での自発運動の発見、が挙げられる。本年度は最終年度として、(1)に関し発現機構を解明し日本化学会で口頭発表を行い、また(2)に関し論文発表を行った。 <意義> これらの結果は、まず毒劇物のヨウ素・ニトロベンゼンを使用しない自発運動系の構築という点で大きな意義を持つ。さらに本結果は、本自発運動が生じるに当たり、1)油相中の金属イオンの還元能力、2)油相中のヨウ素イオンによる還元能力、の二つが重要な役割を果たすことも示した。具体的には、油水界面に配列したカチオン性界面活性剤の界面からの脱着にあたり、油相に還元性が必要であることが示された。 <重要性> 本研究課題を通じてヨウ素系・非ヨウ素系双方の変動機構が解明できたため、ニトロベンゼンやヨウ素を使用しない、無害な材料を利用して活発な自発界面変動現象を得られる可能性が生まれてきた。すなわち、1)水との界面張力が大きく、2)イオン性界面活性剤の対イオンが界面を移動しにくいような油相を選択すればよいことになる。今後は、そのような油相を系統的に調査するとともに、その結果得られた力学エネルギーを電気エネルギーに変換する系の構築に取り組みたいと考えている。
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