我々が提案した配置を使用した量子モンテカルロ法を、量子化学計算パッケージGAMESSに組込み、汎用性の高いプログラムを完成させた。これまでのテストプログラムでは、Full-CI次元が10^4程度のサイズの分子しか扱えなかったが、今回、開発したプログラムでは、3.4×10^<38>(=2^<128>)のサイズまで扱うことができる。(プログラム中のパラメーターを変えることによって、扱えるサイズをさらに大きくすることは容易である。)テスト計算として、水分子の高精度計算を行ったが、結果はCCSD(T)法で与えられる値と比較して2mHartree程の差しかなかった。使用したサンプル数10^8個に対して、Full-CI次元は5×10^12次元であるため、この程度の大きなサイズの計算においても、Full-CI計算の次元よりも少ないサンプルを使って正確な解を求めることが可能であることを確かめることができた。このプログラムは並列計算にも対応しており、現在のところ、32CPUを使用して27.5倍の加速が得られている。 また、理論を励起状態にも拡張した。一般的に量子モンテカルロ法では、励起状態計算は目的とする励起状態の情報を必要とするが、今回の方法では、それらの情報は不必要であるという利点がある。計算精度は、基底状態計算と同様に、サンプル数を増加させることによって常に向上する。これらの結果を学会誌(Chemical Physics Letters)にて発表した。
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