より大きな分子の計算を目的として、昨年度に完成させた配置を使用したモンテカルロ法のプログラムの一般化とチューニングを行った。電子配置の記録の方法を変えたことにより、計算のできる分子のサイズ(軌道数)は、64軌道から任意の軌道数を扱うことができるようになった。また、エネルギー計算の方法を変分的なものから中間規格化を用いた非変分的なものに変えたことにより、計算速度はN(配置数)の2乗からNに依存するようになり、非常に高速化された。この非変分的なエネルギー計算方法は、並列計算にとっても都合が良い。また、サンプリングに関しては、軌道エネルギーを用いたメトロポリスサンプリングの開発を行い、ランダムサンプリングと比較して計算精度が向上するということを確かめた。しかしながら、計算速度と計算精度のバランスでは、これまでのランダムサンプリングの方が、優れていることが分かった。そこで、ランダムサンプリングと重要ではない電子配置のカットオフを組合わせることによって計算の高速化を行い、適切なカットオフのしきい値と時間ステップを用いれば、計算精度を落とさず、計算速度を劇的に向上させることができることを確かめた。また、1重項状態を効率的に計算するために、電子配置のα電子とβ電子の行列式の対称性を用いた新しいサンプリング法も開発した。このサンプリングによって考慮する電子配置の数は約半分となり、モンテカルロ法による統計誤差を減少させることができた。論文は、既に専門誌に投稿済みである。今年度のプログラムとアルゴリズム開発により、大きなサイズの分子の計算が可能になった。また、大きな基底関数が使えるようになり、より厳密な計算が行えるようになった。
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