本研究は「非共鳴高強度短パルス光を用いた新しい振動分光法を開発し、分子クラスターの分子間ポテンシャルの決定」を目的とした。具体的には、遅延時間を持つ2つの高強度レーザー場により分子振動を励起し、遅延時間に依存した振動状態分布変化を測定し得られたビート信号からエネルギー準位を決定できることを実証し、クラスターの分子間振動準位に関する情報を得ることを目指したものである。この手法を、ベンゼン2量体、3量体およびNO-Arに適用した。ベンゼンクラスターでは、報告されている分子間振動バンドに加え、新しい振動バンドを見いだすことができ、本研究で提案した振動分光法が機能することを示した。NO-Arの実験では、観測された振動準位は、分子間ポテンシャル(PES)の計算で得られた振動準位と良い一致を示したが、20cm-1を超える領域では、良い一致は得られなかった。これは現在提出されているPESの修正を示唆し、さらなる解析によって実験と計算が一致するようなPESを与えることができる。本研究では、振動分光法の開発し、新しい振動準位を観測できた。
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