研究課題
平成22年度は、(i)150-2000Kという広い範囲での温度制御が可能な試料作製用マニピュレーターを開発し、さらに(ii)面内回転角±90°で最低到達温度が14Kという電子分光用マニピュレーターの開発を行った。(i)の開発によって種々の金属フタロシアニン薄膜の結晶構造制御が可能となり、(ii)の開発によって極めて高精度・高分解能な電子状態分析を行うことが可能となった。これにより、有機固体・薄膜や有機/金属界面に対して、幾何構造と電子状態の相関についてサイト選択的に解明することに成功した。例えば、軟X線発光分光法(XES)を用いた金属フタロシアニン結晶膜の局所価電子状態の研究においては、炭素原子サイトと窒素原子サイトでそれぞれ異なる局所分子間相互作用が発現していることを明らかにした。この結果を基に、金属フタロシアニン結晶膜に対して高分解能角度分解光電子分光(ARPES)スペクトルの励起波長依存性を測定した結果、有機薄膜中における正孔輸送を支配する最高被占軌道(HOMO)ピークに対して120meVという極めて狭い分子間エネルギーバンド分散関係を観測することに成功し、金属フタロシアニンにおいても結晶構造の制御によってバンド伝導が実現できることを世界で初めて明らかにした。この他にも、X線定在波分光法(XSW)とARPESを組み合わせた有機/金属界面の研究を行うことで、界面における分子構造の対称性変動とそれによる電子状態変化の相関を実験と分子軌道計算の結果から明らかにした。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件)
Physical Review B
巻: 83 ページ: 085304(1-8)
Physical Review Letters
巻: 105 ページ: 046103(1-4)
Journal of Physical Chemistry B
巻: 114 ページ: 7016-7021