研究概要 |
電子励起状態の寿命幅内で近接する2状態は、従来の分光手法では分離不能とされてきた。本研究では、波束干渉の方法論を短寿命電子励起状態に拡張することで、それら2状態の共鳴エネルギーを分離して決定する新しい分光手法を開発する。期間内に原理検証実験を行うために、初年度は実験装置の整備を行った。 本研究では、2連のマイケルソン干渉計を用いて、強度比r_1、 r_2と遅延時間t_1、 t_2を制御した4連光パルスによって、振幅比r_1、 r_2と相対位相φ_1、φ_2を制御した4つの分子波束を作り、それらを干渉させる。そのために位相精度で安定化したマイケルソン干渉計の作成とその評価が重要である。初年度には10nmの位置分解能をもった閉ループ制御のピエゾステージを2セット購入し干渉計を作成した。一般的な大学の実験室とは異なり、関西光科学研究所のクリーンルーム実験室では、空気の対流に伴う光路長の変化がほとんど無く、積極的な安定化を図らなくても、十分な位相安定性、再現性が得られた。 次に、この光の位相振幅情報を物質の電子状態に移す。短寿命電子励起状態に挑戦する前に、まずは、寿命が長く、共鳴周波数が既知のRb原子のD1(794nm),D2(780nm)状態を対象に波束干渉を確認し、状態探索法を確立する。電子励起状態のポピュレーションを観測するためには、励起状態からの蛍光を観測する。初年度はまず、Rbセルと昇温システムを準備し、短パルスレーザーによって励起したRb原子の2状態からの蛍光を、分光器によって分離して観測した。2年目には、干渉計の出力を用いてRb原子の選択的電子励起を行い、共鳴状態探索法のルーチンを構築する。それを用いて、短寿命状態で未確定の共鳴状態の決定に挑戦する。
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