本年度は溶液ジェット法による糖薄膜の端緒の製膜および高感度真空紫外円二色性スペクトル計測手法の確立を行った。 本研究は真空紫外円二色性計測による糖鎖構造解析を将来目標としており、その基礎として単糖試料の円二色性データベースの構築を目指すものである。本研究の遂行を将来的には糖鎖構造解析へとつなげていき、糖鎖の構造解明による各種疾病の予防や治療へ貢献していきたく考えている。 本年度は糖薄膜の製膜装置として溶液ジェット法を用いたものを開発し、糖薄膜(試料:アラビノース)の端緒の製膜に成功した。真空中にパルスバルブで溶液を噴霧し、試料基板を回転させつつ糖薄膜を製膜した。次年度に顕微鏡観察、X線回折測定等を用いて、作製した膜の評価を行い、均一性、結晶性の確認を行う。均一性が高くかつ、微結晶集合体など結晶性の低い膜を用いて、真空紫外円二色性計測を行う。 また産業技術総合研究所の放射光施設TERASのビームラインBL-5Bにて、光弾性変調器を用いた円二色性測定システムの高感度化に成功した。既に整備されている偏光アンジュレータ光源と組み合わせた新規円二色性測定システムの構築に成功し、計測感度を従来のアンジュレータによるものよりも約10倍以上向上させることに成功した。測定波長領域は光弾性変調器の光学材料であるCaF2が透過可能な波長135nm程度までである。本計測装置を最大限に用いて、次年度の糖薄膜の真空紫外円二色性データベース構築を進めていく予定である。 以上、当初の研究実施計画に即した研究成果を得ることに成功した。
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