研究概要 |
アゾベンゼンのカテコール配位子を2つ導入したフォトクロミック配位子とホウ素との1:1の錯形成によって生成する大環状錯体について継続して検討を行い、不斉炭素を導入することで、キラルならせん構造をもつ大環状錯体を得ることを試みた。配位子と大環状錯体の円二色性スペクトルを比べると、コットン効果の符号の逆転が見られることから、錯形成に伴いらせん構造が逆転していることが示唆された。また、大環状錯体の光異性化を行うと、コットン効果のわずかな増加が見られた。これらの結果は、らせん構造の光照射と錯形成による二重応答性を示していると推察される。次に、錯形成によって、光異性化挙動の進行を制御できる系を目指して、剛直な配位子を用いることで、錯形成により分子の自由度が減少して異性化の進行を制御することを試みた。アゾベンゼンの4,4'部位にカテコールを導入した配位子を合成し、ホウ酸トリイソプロピルとの反応により、ホウ素錯体を単離した。生成物は赤色ガラス状固体であり、配位子とホウ素がn:nで反応したと考えられる。また、各種NMR測定により、アゾ基はトランス体となっていることが示唆された。配位子の光異性化反応は進行するが、ホウ素錯体は紫外光を照射しても、ほとんど変化が見られなかったことから、錯形成が異性化の進行を止めていることがわかった。現在、アゾベンゼンのシス体の錯体の合成についても検討中である。また、同じ配位子を用いてチタンとの錯形成を試みたところ、配位子とチタンが3:2で反応した大環状錯体の生成が示唆された。チタン錯体に紫外光を照射しても、ホウ素錯体と同様に光異性化の進行を制御できることがわかった。
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