研究課題
本研究は、配位金属周辺に基質との反応空間を確保しつつ、分子全体としてのかさ高さを有する新規なボウル型カルベン配位子を開発し、その配位子の特性を活用して配位不飽和0価ニッケル錯体を合成し、その反応性を明らかにすることを目的として研究を行った。まず、末端の芳香環上にメチル基を有するm-テルフェニル基が窒素上に導入されたボウル型カルベン(ITmt)を合成し、それと0価ニッケル源であるNi(cod)_2との反応を行った。種々検討したところ、ITmtとM(cod)_2を1:1のモル比で反応させると、新規なニッケル錯体が効率よく生成することが分かった。NMR解析から、得られた化合物は、一つのITmtおよびcodがニッケルに対し配位した錯体であると考えられる。次に、さらによりキャビティサイズの大きな配位子として、テルフェニル基の代わりにm-キンケフェニル基を有する新規なボウル型カルベン(ITmq)を合成した。このITmqとNi(cod)_2との反応を検討したところ、ITmtの場合と同様に、カルベンとcodがニッケル上に配位したと考えられる化合物が得られることが分かった。これらの結果は、窒素上にメシチル基を有するカルベン(IMes)とNi(cod)_2との反応で、二つのcodがニッケル上から脱離し、二つのカルベンが配位した0価ニッケル錯体((IMes)_2Ni)が得られることとは対照的であり、配位金属周辺に比較的大きな空間を有するというボウル型カルベンの特徴を反映したものと考えられる。また、カルベン供与体として有用なカルベン銀錯体の合成も行った。得られた銀錯体と2価パラジウムとの反応では、効率よくカルベントランスファーが起こり、対応するパラジウム錯体が得られた。
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Angewandte Chemie International Edition 49
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Phosphorus, Sulfur, and Silicon and the Related Elements (in press)
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