研究課題
本年度は、0価Ni源を用いたボウル型カルベン配位子を有するNi錯体の合成に加えて、同配位子を有する2価ニッケル錯体の合成およびそれを用いた0価錯体の合成を目的として種々検討した。また、Niと同族のPd錯体の反応性を明らかにした。0価Ni源としてNi(cod)_2を用い、末端の芳香環上にメチル基を有するボウル型カルベン(ITmt)との反応を行ったところ、Niに対し一つのITmtおよびcodがNiに対し配位した錯体が得られた。また、キャビティの大きいボウル型カルベン(ITmq)の場合も同様の結果であった。ITmtを有する錯体について、種々反応性を検討したところ、触媒的アルキンの三量化反応が効率よく進行することが分かった。炭素-水素結合や炭素-酸素結合の切断反応は、室温付近では反応は全く進行せず、加熱条件では錯体の分解が見られた。次に、2価錯体の合成を目指し検討を行った。種々の2価ニッケル源とITmtの反応では、目的の生成物は単離できなかった。そこで、カルベン供与体としてカルベン-銀錯体(ITmtAgCl)との反応を検討した。ITmtAgClは、Ir、Pd、Auといった金属に対しては、良好なカルベン供与体として機能するものの、Niを用いた場合は意外なことに目的物は得られなかった。ボウル型カルベン配位子の特性を明らかにするべく新規なITmtPdCl_2を用い、触媒的鈴木-宮浦カップリング反応を検討した。種々のArBrとPhB(OH)_2の反応を最適化したところ、DMF溶媒、塩基としてCs_2CO_3を用いた場合30℃で速やかに進行し、高収率でビアリールが得られた。興味深いことに、反応温度を50℃以上にすると触媒種が速やかに失活した。これらより、ボウル型カルベンITmtは従来のカルベンに比べ金属錯体の熱安定性が低いものの、触媒反応にも活用できることが期待できる。
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