申請者は有機ケイ素化合物から様々な不安定化学種を電気化学的に発生・蓄積する手法を確立している。そこで、申請者はデンドリマー状の置換基を有するカルボカチオンの性質を明らかにし、この化学種を用いた新規デンドリマー及びデンドリマー状活性種の創出を本研究の目的として研究を行ってきた。昨年度までにデンドリマー状カルボカチオンの反応性と安定性の明らかに出来たので、今年度は多様なコア分子を有するデンドリマーの迅速合成へと展開した。 (1)低分子のコアとの反応によるデンドリマー合成 デンドリマー状カチオンとチオフェン誘導体やメトキシ基などの電子豊富な置換基を有するベンゼン類との反応を検討し、特にチオフェンに対して最大で3つのデンドリマー状置換基がワンポットで導入出来ることを見出だした。また、オリゴチオフェンをコアに有するデンドリマーも同様の手法を用いることで達成出来た。 (2)ポリマーとの反応によるデンドロナイズドポリマー合成 デンドリマー状カチオンの高い反応性を利用して、ポリスチレン側鎖のフェニル基上にデンドリマー状置換基を直接導入する新しいタイプのデンドロナイズドポリマー合成法を開発した。低分子ポリスチレンを用いた場合に得られたデンドロナイズドポリマーはMALDI-TOF MS解析により、分子量と導入率を厳密に求めることが出来た。この手法は分子量20万程度のポリスチレンに対しても進行することから、AFMなどによるデンドロナイズドポリマー一本鎖の観察が可能であると考えている。
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