平成22年度は、ジシレンの新規π共役拡張系分子の構築を指向して、アルキニル基をリンカーとし二つのジシレンユニットを連結した分子を標的化合物に合成検討を行った。目的としている分子はジシレンの二つのケイ素上の置換基が異なる非対称型ジシレンであるが、対称型に比べ合成例は少なく、その効率的な合成法も確立していない。そこで、その末端構造に相当する非対称型ジシレンの高効率的合成を検討した。その結果、シリレン(もしくは対応するシリレノイド)のアルキニルジクロロシランへの形式的挿入反応によって、前駆体であるジシランが高効率で得られることを見出した。次に、得られたジシランに対して種々の還元剤を作用させ、非対称型アルキニルジシレンの合成を検討した。発生そのものは捕捉実験、各種スペクトル測定によって確認できているものの、発生効率は未だ低く、現在その効率的な発生条件を検討している。ここで得られる非対称型ジシレンの合成における知見は目的としているビスジシレンの合成においても有用なものであると考えている。具体的には、シリレンの挿入反応をビス(ジクロロシリル)アセチレンに対して適用することにより、前駆体であるビスジシランを得ることが可能であると考えている。
|