研究概要 |
トリアニオンとして振る舞う高周期14族元素化合物の合成 立体保護能の高いかさ高い置換基として、(Tip)_2C_6H_3基、(Mes)_2C_6H_3基、および、(Dip)_2C_6H_3基を用い、ゲルマニウム元素上に、tBuMe_2Si基およびSiMe_3基を導入したジヒドロゲルマンの合成に成功した。さらに、ゲルマニウム上の水素を一つだけ臭素に置き換えた化合物1を合成することに成功した。1はゲルマニウム上にシリル基、臭素、水素という3つの異なる官能基が配置されているため、反応試薬の違いにより、アニオン化される部位が異なると予想される。実際に、リチウムナフタレニドを作用させると、ゲルマニウム上の臭素だけが、リチオ化されることを、D_2OやMeIなどの各種求電子試薬との反応により明らかにした。こういった反応試薬の違いによりアニオンを作り分けられる結果は、高周期14族元素の多重結合を効率的に合成するための鍵試薬として用いることができる可能性をしめしており、大変興味深い。また、同族でより高周期のスズにおいても同様の研究を行った。 また研究代表者は、平成21年4月より、京都大学次世代開拓研究ユニットから、岡山大学大学院環境学研究科に異動したため、これら成果を用いたアニオン種の化学を礎に、環境適応型機能性材料として期待されているフラーレンへ展開する研究を行った。C_<60>(H)(CH_2SiMe_3)およびC_<60>(H)(CH_2SiMe_2(pentyl))のベンゾニトリル溶液に、塩基としてtBuOKのTHF溶液を作用させ、対応するアニオン種を発生させた。その後、反応溶液に3当量のデンドロンブロミド3を作用させ、65度で2時間攪拌したところ、新規フラロデンドロンC_<60>(denndron)(CH_2SiMe_3)(収率54%)とC_<60>(denndron)(CH_2SiMe_2(pentyl))(収率43%)を得たこれらの構造は^1H, ^<13>C NMR, MALDI TOF-MS, IR,およびUV-Vis-NIRの測定により同定した。UV-Vis-NIRスペクトルの測定では、クロロホルム中、443nm(ε=5850)にC_<60>の1,4-付加体に特徴的な吸収を観測した。合成した化合物はデンドロン骨格の付与により、トルエン、ベンゼン、クロロホルムTHFなどの溶媒に対し極めて溶解性が高く、溶液プロセスでの取り扱いが簡便であった。そこで、これらの化合物をn型半導体、P3HTをp型半導体としたバルクヘテロ接合型有機薄膜太陽電池を作成し、動作確認を行ったところ、開放端電圧(V_<OC>)0.50V,短絡電流(I_<SC>)85.4μA/cm^2という値を示し、有機薄膜太陽電池として動作することを確認した。
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