研究課題
電荷移動(CT)相互作用は主に軌道間に働く相互作用である。ジフェニルエテンとキラルなシアノ安息香酸エステルとの間の光環化反応に特徴的なPaterno-Buchi反応と呼ばれるオキセタン生成反応においては、励起波長による立体選択性の変化が見られるが、その立体選択性はCT励起で減少するという結果となった。本年度はこの原因を究明することを主目的として、具体的には次の項目の検討を行った。a)温度効果、置換基の詳細な検討と、反応における熱力学的パラメーター:エンタルピー・エントロピー項の算出、とそれらパラメーターの相互関係の検証。b)溶媒効果ならびに圧力効果等、外部因子による影響の検討。これらの詳細なメカニズムの検討を通じて、光不斉反応における励起波長効果の一般性を検証し、本系、並びに過去のCT励起光反応系における、その介在メカニズムを明らかとした。成果はアメリカ化学会の学術誌に報告したが、極めて高い反響を得ることができた。さらに、分子内不斉光反応に展開する足掛かりとして、類似の反応系のアキラルな分子内反応を設計し、新たに一連の化合物に関して光反応を検討し、CT性の大小が反応選択性に与える影響について精査した。また、これら反応系において、温度、圧力、溶媒、並びに規制空間の効果を検討した(結果はイギリス化学会の学術誌に報告)。今後は、分子内不斉光反応へと展開する予定であり、円二色スペクトルの理論研究と併せて、完全な立体制御を達成するための基盤を得ることが可能となるものと考えている。
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