研究概要 |
代表的な骨格融合種であるN-フューズポルフィリンの近赤外領域における吸収および発光スペクトルについて、その詳細を検討した。その結果、混乱ピロールのβ位への電子求吸基の導入およびメゾアリール基への電子供与基の導入が発光特性の改善に有効であることを見いだした。N-フューズポルフィリンのの発光は極めて短い寿命や大きいストークスシフトなどの特徴を示し、その要因は励起状態分子内プロトン移動によるものであることが示唆された。さらに、フューズユニットの導入は二光子吸収断面積の改善にもつながることを見いだした。 N-フューズポルフィリンの鉄錯体およぼマンガン錯体の合成に初めて成功した。鉄錯体はN-フューズポルフィリンの間に鉄原子が挟まれたダブルデッカー構造を有しており、極めて狭いHOMO-LUMOギャップを有する希有な錯体であることがわかった。ここで、N-フューズポルフィリンは互いに回転していなかったことから、N-フューズポルフィリン配位子は比較的大きなπ共役系を有しているにもかかわらず、金属と強固に結合を形成できることが示された。マンガン錯体は脱メタルが可能なN-フューズポルフィリン遷移金属錯体の初めての例であり、N-混乱ポルフィリンからの骨格変換を利用することで、アルキル置換N-フューズポルフィリンの合成に応用可能であることが実証された。 ポルフィリン関連化合物の異性体の研究の過程で、N-混乱コロールおよびノロールの合成に成功した。特にノロールはN,C-連結ビピロール部位を有する初めてのポルフィリン関連化合物であり、新しい分子設計の指針を与えるものとなった。その後、C-フューズノロールの合成にも成功し、N,C-連結ビピロール導入の一般性を示すことができた。
|