研究概要 |
本研究では、ベンゼンのCHの1つを13族元素ガリウムを含む等電子遷移金属フラグメントL_ηMGa^-で置換した、σ結合型ガラタベンゼン錯体の合成を行い、その構造、芳香族性、および遷移金属フラグメントのガリウムへの立体的および電子的効果について明らかにすることを目的とする。 当研究室では、ガリウム架橋二核錯体Cp*(dppe)Fe-Ga=ML_η(Cp*=η5-C_5Me_5,dppe=Ph_2P(CH_2)2PPh_2)の合成、構造および反応性について研究している。その合成は、Cp^*(dppe)FeGaCl_2(1)と陰イオン性金属フラグメントML_η^<2->との脱塩反応を用いている。この方法を応用して、錯体1と陰イオン性有機フラグメント(LiCH=CHCH_2CH=CHLi)^<2->を含む化合物との脱塩反応で、ガラシクロヘキサジエニルおよびその類縁体を配位子とする鉄錯体Cp*(dppe)Fe(GaCH=CHCH_2CH=CH)(2)などの合成を試みたが、目的錯体は得られなかった。さらに、スズを含む環状化合物R_2SnCH=CHCH_2CH=CHおよびその類縁体と1との反応も試みたが、錯体2などは生成しなかった。いずれの反応でも、{Cp*(dppe)Fe}_2GaCl(3)の生成が示唆された。この結果は、ガリル錯体の不均化反応に拠るものと考えられる。錯体1は、錯体3とGaCl_3の平衡混合物として存在し、通常その平衡は錯体1に大きく傾いている。陰イオン性有機フラグメントやスズ化合物は錯体1よりもむしろGaCl_3との反応が速く、平衡が徐々に右に傾いた結果、錯体3が生成したと考えられる。また、σ結合型ガラシクロペンタジェニル配位子を含む鉄錯体Cp*(dppe)Fe(GaCR=CRCR=CR)(4,R=Me,Ph)の合成も検討し、その生成を示唆する結果を得ている。
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