研究概要 |
Aサイト秩序型ペロブスカイト酸化物について、15GPa・1000℃の超高圧高温条件を用いた新物質探索を行った。 1. 新たなA'イオンの探索をテーマとして、CaA'3Ti4O12(A'=Pd2+,Ag2+,Mn2+)の合成を試みたところ、いずれも目的物を得ることが出来た。基礎物性評価の結果、CaPd3Ti4O12は、非磁性絶縁体であり、PdはPd2+の低スピン状態(d8,S=0)にあることが分かった。CaAg3Ti4O12は、局在スピンを有するキュリーワイス常磁性絶縁体、CaMn3Ti4O12は、Tg=9Kのスピングラスであることが分かった。 2. A'=Pd2+系CaPd3B4O12について、新規Bサイトの探索を行ったところ、B=V,Cr,Mn,Feの合成に成功した。B=Vはパウリ常磁性金属、B=Mnは強磁性絶縁体、B=Feは反強磁性絶縁体であった。B=Crについては、強磁性金属のCrO2が不純物として多く含まれていたため、物性評価を行っていない。放射光X線回折データに基づく構造解析を行ったところ、B=Mn,Feについては、A'サイトとBサイトイオンの混合が起こっている可能性が示唆された。 3. サイト間電荷移動が報告されているLnCu3Fe4O12について、新たなAサイト希土類金属イオンの探索を行ったところ、A=Ce~Ybまでの試料を得ることが出来た。いずれの試料にも不純物が含まれていたが、磁化測定の結果、Aイオン半径の減少に伴って、格子体積の減少と反強磁性相から強磁性相への連続的な変化が観測され、LnCu3Fe4O12において反強磁性絶縁体以外の基底状態の存在が明らかになった。
|