未知物質が示す構造・電子物性は予測不能であり、高温超伝導など、工業応用において有望な機能が得られる可能性がある。本研究課題では、超高圧合成法を用いて新物質の探索を行い、結晶構造解析・電子物性評価に基づく機能開拓を目標とした。 新奇Aサイト秩序型ペロブスカイトの探索を、10~15万気圧・1000℃の超高温高圧条件を用いて行った。その結果、これまでに報告されていない新物質が得られた。白金(Pt)を含むCaCu3Pt4O12は、ペロブスカイト構造においてPt^<4+>イオンのみがBサイトを占有する初めての物質である。この物質の他に、白金族金属元素としてイリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)を含む新物質CaCu3Ir4O12とCaCu3Rh4O12の超高圧合成にも成功した。以上の結果から、これまでに比較的研究例の少ない白金族金属元素を含む物質の合成において、超高圧合成法が特に有効であることが分かった。 異常高原子価と呼ばれる高い酸化状態のイオンを含む新物質の探索も、超高圧合成法を用いて試みた。Fe4+またはFe3.75+状態にある新物質群ACu3Fe4O12(A:アルカリ土類金属、希土類金属)を、約15万気圧・1000℃の超高温高圧条件を用いて合成することに成功した。これらの物質群は、これまでに報告された異常高原子価Feイオンを含む物質とは異なる構造・電子物性を示した。例えば、SrCu3Fe4O12は、非常に大きな負の熱膨張率(約-2μ/K)を示した。また、YCu3Fe4O12は、250K以下で強磁性・電荷不均化状態に転移した。以上の成果は、詳細なデータ解析の後、論文発表を行う予定である。
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