研究概要 |
メタンモノオキシゲナーゼ(MMO)は不活性なメタンをメタノールに転換する酵素で,可溶型のsMMOと膜結合型のpMMOの2つの型が知られている。sMMOはX線構造解析から鉄活性中心の構造が明らかにされ、さらに、分光学的手法や理論的手法からも、その反応メカニズムは明らかにされつつある。それに対して、銅活性点をもつpMMOに関する研究例は少なく、pMMOのX線構造解析から二核銅及び単核銅を活性点に有する多核の金属活性点を持つことが明らかとなったものの、その活性化の仕組みや反応機構は分子レベルでは未だによく分かっていない。申請者らは、量子化学計算の結果から反応中心は二核銅活性点であると提案してきた。さらに詳しい電子状態の解析し、二核銅酸素錯体の電子状態とメタンとの反応性について理論計算により考察した。反応物,遷移状態,中間生成物及び生成物の構造最適化を実行した。計算方法はBecke3LYP^*法、基底関数は銅の基底関数にはWachters-Hay基底,銅以外にはD95^<**>基底を用いた。活性点の銅酸素錯体はオキソ状態としてCu^<III>Cu^<III>とCu^<III>Cu^<II>の2つの状態を、パーオキソ状態としてはCu^<II>Cu^<II>とCu^<II>Cu^Iの2つの状態を考慮した。それらのスピン多重度はそれぞれ1,3重項状態と2重項状態とした。その結果、中心の銅二核錯体が+2価と+3価のときに反応性が高いことが明らかとなった。これらの結果は論文、ならびに学会発表に成果として報告されている。今後は本研究課題をさらに発展させるために、QM/MM計算を行い、酵素の反応機構の解明にチャレンジする予定である。
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