研究概要 |
本研究では、金属錯体を用いた水の可視光分解反応の実現に向け、申請書にて提案した研究計画に従い、研究を行った。高活性かつ高安定性を有する種々の酸素発生触媒を合成し、酸素発生反応速度論解析、電気化学的測定、ストップトフロー法、DFT計算などを用いて反応機構を明らかにした(Chem.Lett.2009, Chem.Eur.J.投稿中,Chem.Lett.投稿中)。本研究成果は、酸素発生触媒のこれまでの常識を覆す極めて重要な発見であると、高い評価を受けている。また、安価かつ高活性な酸素発生触媒の構築を目指し、これまでに反応機構に対して得られた知見を応用し、新規錯体合成を行った。これまでに、数種の新規錯体の合成に成功し、触媒機能評価を行った。現在のところ、これまでに報告された錯体と比べより活性の高い錯体は得られていないが、新規触媒合成に関して有意な知見を得ることには成功している。一方、水素発生触媒の研究においては、プロトン共役電子移動を利用することにより、安価かつ高活性な鉄-硫黄系触媒の開発に成功した(Chem.Lett.2009, J.Am.Chem Soc.に投稿予定)。水素発生過電圧は反応条件によって異なるが、条件によっては白金電極に匹敵する機能を有する化合物群も見つかっており、極めて重要な研究成果であるといえる。更に、光化学的水素発生反応に関する研究も強力に推進しており、光電子移動と触媒機能の融合による光エネルギー変換の実現に大きく近づいている(Dalton Trans.2009, Dalton Trans.2010, Chem.Eur.J.2010)。以上のように、本科学研究費を有効に活用することにより、平成21年度は金属錯体を用いた水の分解反応に関する多くの知見を得ることができた。
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