研究概要 |
本研究では、申請書にて提案した研究計画に従い、金属錯体を基盤とした人工光合成システムの開発を目指した基礎研究を行った。酸素発生触媒開発には、ルテニウム単核錯体触媒の研究から得られた知見をもとに、種々の金属錯体触媒を合成し、その触媒機能評価を行った。また、酸素発生触媒反応の機能評価には、反応速度論解析、電気化学的測定、ストップトフロー法、DFT計算などを用いて明らかにした(Angew.Chem.Int.Ed.投稿中)。特に、酸素発生触媒反応システムに於いてセリウムイオンが重要な役割を果たすことを見出し、報告した(Chem.Asian J.2010)。また、安価かつ高活性な酸素発生触媒の構築を目指し、コバルト、鉄、セリウム等の新規金属錯体の合成を行った。これまでに、数種の新規錯体の合成に成功し、触媒機能評価を行った。 一方、水素発生触媒の研究においては、プロトン共役電子移動を利用した、安価かつ高活性な鉄-硫黄系触媒の開発に成功している(論文投稿準備中)。今回開発した水素発生触媒は、バルクのpHを変化させても活性が変化することはなく、これまでの水素発生触媒とは極めて異なった性質を示す大変興味深い化合物である。更に、光エネルギー変換に関連し、光駆動反応システムの構築も行っている(Dalton Trans.2011, Chem.Eur.J.2011)。以上のように、本科学研究費を有効に活用することにより、平成22年度は金属錯体を用いた水の分解反応に関する多くの知見を得ることができた。
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