研究概要 |
[RuCl_2(C)(H_2IMes)(PCy_3)](1-PCy_3)から誘導できる一連の[RuCl_2(CE)(H_2IMes)(dmap)_2](E=Te,2-CTe;E=Se,2-CSe;E=S,2-CS;E=O;2-CO)の反応性について系統的に検討した。特にCTeおよびCSe錯体の反応性については、従来ほとんど検討されておらず未解明であった。アミン類を用いる反応は複雑な混合物を与えたが、ホスフィンとの反応ではカルコゲン原子特異性が見られた。 1-CTeとPCy_3を室温で反応させると、元のカーバイド錯体1-PCy_3とTe=PCy_3が生成した。2-CSeでも同様に1-PCy_3とSe=PCy_3が生成した。一方、2-CS,2-COの場合には、DMAP配位子とPCy_3との配位子置換反応のみが進行し、[RuCl_2(CE)(H_2IMes)(PCy_3)](E=S,O)を与えた。 次に、PPh_3との反応を検討した。2-CTeとPPh_3を室温で反応させると、Te粉末の析出とともに、カーバイド錯体[RuCl_2(C)(H_2IMes)(PPh_3)](1-PPh_3)が生成した。2-CSeの反応はPCy_3のときとは異なり、1-PPh_3を生成せず、原料の2-CSeと配位子置換生成物[RuCl_2(CSe)(H_2IMes)(PPh_3)]の平衡混合物となった(^1H NMRより56%生成)。2-CSの場合も平衡混合物となり、[RuCl_2(CS)(H_2IMes)(PPh_3)]が30%生成した。これに対して、2-COはPPh_3とほとんど反応しなかった。2-CSe,2-CS,2-CO錯体での配位子置換反応に注目すると、PPh_3配位錯体はCO<CS<CSeの順に生成しやすい傾向にあった。これはCE配位子のトランス位にあるDMAPが解離する速度に比例すると考えられ、トランス効果の強さはCO<CS<CSeの順であると解釈できる。
|