研究概要 |
「新しい希土類ヒドリドクラスターとd-ブロック遷移金属を含む多金属ヒドリド化合物の水素吸蔵性に関する研究」 希土類金属とd-ブロック遷移金属を含む混合型多金属ヒドリド化合物は、大きく性質の異なる金属核同士が協奏的に基質の活性化を行うことで、従来の同種多金属化合物にはない特異な反応挙動を示すと期待される。特に構造明確な分子性の多金属ヒドリド化合物は、例えば水素吸蔵合金LaNi_5のような無限構造を有する無機固体化合物の分子モデルとしてとらえることができ、非常に興味深い。しかしながら、その合成法が確立されておらず、また生成したヒドリド化合物の構造同定の困難さからこれまであまり研究されてこなかった。今回、これまで新しく開発した希土類ヒドリド化合物[{(C_5Me_4SiMe_3)YH_2}(THF)]や[{(C_5Me_4H)YH_2}(THF)_4]や[{(C_5Me_5)YH_2}(THF)_2]を用いてd-ブロック遷移金属であるモリブデンやタングステンのヒドリド錯体[(C_5Me_5)M(PMe_3)H_5](M=Mo,W)と反応させることによって、分子構造が明確でしかも可逆的に水素を吸着・放出する混合型多金属ヒドリド化合物の合成に成功した。さらに水素との反応に伴う構造変化をX線構造解析で直接観察することにも成功した。これまでこのようなタイプの多金属ヒドリド化合物の合成や水素との反応プロセスを明らかにした例はない。この成果は、多金属化合物の構造と水素の吸着・放出の相関に基礎的な知見を与えるとともに、新しい水素吸蔵材料の開発にもつながると期待できる。
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