研究概要 |
平成21年度は,表裏で組成が異なる非対称なジャイアントベシクルの内部で膜タンパク質をその場で合成し,膜に自己組織化させる手法を開発し,それが機能発現する様子を高空間分解能(厚さ方向で1nm以下)で可視化するためのピエゾ制御型ミラーを用いたマイクロ干渉顕微鏡を構築した。 ○非対称脂質二分子膜のジャイアントベシクルが安定に形成される条件 真核細胞の細胞膜のうち,表裏で非対称な組成として代表的なフォスファチジルエタノールアミン,およびホォスファチジルコリンを用いて非対称脂質二分子膜のジャイアントベシクルを形成した。これら分子を溶解した油層を調製し,バッファー層,エマルション層を順次重層して,油中水滴エマルションを遠心沈降することで,ジャイアントベシクルを得た。 ○マイクロ干渉顕微鏡の構築 第1段階として,水銀ランプをバンドパスフィルターを通して入射光とし、サンプルからの透過光が干渉されて結像する顕微鏡を構築した。第2段階として,厚さ方向についてナノメートルオーダーで計測できることを高イオン濃度水溶液中のマイクロビーズの干渉像から確認した。第3段階として、ミリ秒オーダーで干渉像を観測できるようにCCDカメラをセットアップし、ガラス基板上の細胞膜の接着斑やジャイアントベシクルの接着状態についてダイナミクスを観測した。これにより、従来の光学顕微鏡では実現できなかったガラス界面近傍の膜ダイナミクスを界面選択的に追跡できるようになった。
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