研究概要 |
本研究は,化学物質受容体やイオノフォアとして機能する膜タンパク質が,厚さ5nmの生体膜において如何に構造形成し,機能するかという非平衡系のダイナミクスを計測する手法の開発を目的とした. 夾雑物のないモデル生体膜として袋状脂質二分子膜であるジャイアントベシクルに着目し,mRNAから膜タンパク質が合成される反応系の内封法を構築した.平成22年度では,蛍光膜タンパク質の一つであるeGFP-BmOR1をGV内部で合成したところ、これが自発的に膜に組み込まれることを共焦点レーザー走査型蛍光顕微鏡観測によって明らかにした. また一方で,脂質膜ダイナミクスと膜タンパク質の協同現象を計測するため,水銀ランプをバンドパスフィルターを通して入射光とし,サンプルからの反射光と基板からのそれとを干渉させて結像することで,厚み方向でナノメートルの分解能をもつ反射干渉顕微鏡を構築した.これにより,基板上に接着したジャイアントベシクル膜の非平衡状態における特異な変形を観測することができた.以上の成果は,生体模倣反応場であるジャイアントベシクルを用いて,膜タンパク質の形成過程や機能発現に分析化学的にアプローチできる要素技術として重要である.
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