サケ精子やウシ胸腺の高分子量二本鎖DNAがイオン液体|水界面を横切る移動をイオン移動サイクリックボルタンメトリー(CV)により確認した。イオン液体の構成カチオンとして親水性アニオンと相互作用することが分かっているoctadecylisoquinoliniumを用い、親水性の多価アニオンである二本鎖DNAとの特異的な相互作用を期待した。イオン移動CVには二本鎖DNA由来のイオン液体|水界面を横切るイオン移動電流が確認された。また、界面イオン移動に先だって、二本鎖DNAがイオン液体|水界面に吸着することによる電流も見られた。イオン液体構成カチオンに、バルキーで親水性アニオンと相互作用しないtrihexyltetradecylphosphoniumを用いた場合にはこれらの電流は観測されず、二本鎖DNAは水からILに移動しなかった。上記の電気化学測定結果を踏まえて、octadecylisoquinolinium系のイオン液体を用いて二本鎖DNAの液液抽出実験を行った。イオン液体構成イオンの液液分配により界面電位差を制御することで、水中の二本鎖DNAをイオン液体に定量的に抽出できること、さらに、イオン液体に抽出された二本鎖DNAを水相に定量的に逆抽出できることを見出した。イオン液体-水二相系における電気化学的概念の導入およびイオン液体構成カチオンの設計により、二本鎖DNAの新規液液抽出系が構築可能であることが明らかとなった。
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