本年度は、以下の研究を行った。 1.トリオクチルメチルアンモニウムイオン(TOMA+)によるdsDNAの促進イオン移動サイクリックボルタンメトリ-(CV) 2.エチジウムイオン(Et+)によるdsDNAの促進イオン移動CV 3.蛍光測定による二本鎖DNA (dsDNA)とイオン液体構成カチオンの相互作用の評価 1では、前年度にdsDNAの促進イオン移動を起こすことを見出したoctadecylisoquinolinium (C18Iq+)の特異性の有無を明らかにすべく、アニオンとイオン対を形成しやすく相間移動触媒として用いられるTOMA+を構成イオンとするイオン液体(IL)を用いて、前年度と同様に、IL|水(W)界面を横切るイオン移動CVを記録した。W相中にdsDNAが存在してもCVに変化がないことから、TOMA+とdsDNAの相互作用はC18Iq+とdsDNAのそれよりも弱いことが示唆された。2では、インターカレーターでありdsDNAと強く相互作用するEt+を構成イオンとするILの調製を試みた。常温で固体のEt塩が得られたため、他のILにEt塩を溶解してIL|W界面におけるイオン移動CVを記録した。促進イオン移動電流が観測されたが、Etの疎水性が大きくないため、IL中のEt+のWへの移動がdsDNAに促進されている可能性が示唆された。3の蛍光測定では、C18Iq+の疎水性が大きく水にほとんど溶解しないため、疎水性が小さく、C18Iq+と同じ芳香環部位を持つbutylisoquinolinium (C4Iq+)を用いた。C4Iq+からの蛍光強度のdsDNA濃度依存性より、C4Iq+ひとつあたり相互作用する平均dsDNA塩基数およびその平衡定数を見積もった。isoquinoliniumのdsDNAとの相互作用はEt+よりは弱く、TOMA+よりは強いことが明らかとなった。
|