パルス磁場中での蛍光強度測定装置を構築した。2mFのコンデンサーバンクとエッジワイズ巻コイルを使用して、幅0.5ms、最大4Tのパルス磁石を作成した。蛍光の励起光としてAr^+レーザ(波長488nm)を用いた。試料として、代表的ならせん分子であるDNAを用いた。蛍光色素としてOxazole Yellow homodimerの一種であるYOYO-1を用いた。YOYO-1は2重らせんのDNAに特異的に結合し、蛍光性を示す。構築した装置を用い、パルス磁場中で蛍光強度の時間変化を観測したところ、パルス磁場印加に伴って少し蛍光強度が減少した。しかしながら、蛍光励起に使用したレーザの安定性が悪く、ミリ秒の時間スケールでその強度が変動するため、安定した測定が出来ず、明確なシグナル変化を観測するには至らなかった。また所有のコンデンサーバンクでは0.5ミリ秒より短いパルス磁場が出せないためコイルに熱が生じ、磁石が冷却するのを待つ必要があるため繰り返し周波数も0.1Hz以下と低かった。高精度な蛍光強度測定が必要とされる本研究では、パルス磁場の幅を短く、繰り返しを速くする必要があることが分かった。この問題を打破すべく、キセノンフラッシュランプ用の2μFのコンデンサを用いて繰り返し周波数が高いパルス磁石を作成した。磁場の最大強度が1T程度ではあるが、パルス幅が50μsの磁場を発生させることが可能であり、また10Hz程度で繰り返し発生させることができた。これを用いて、蛍光強度検出を行うとノイズを低減させることに成功したが、上記のサンプルでは蛍光強度の時間変化が得られなかった。そこで、径の大きならせん構造を持つプラスミドDNAを試料とすることを検討した。銀ナノ粒子で全体をコーティングして導電性を高め、さらにタンパク質をスペーサとして電位感受性色素であるフルオレセインを結合させることができた。さらにパルス磁場中でわずかではあるが蛍光強度の変化が観測された。
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